10/13〜14のアマゾンプライムデーに先立って、9/28〜10/14までキンドルセールが開催中ですね。

そんなわけで目ぼしい本を探していたところ、おすすめ商品に出てきたので(セール品でもないのに)つい買ってしまったのがこちらの本。

 

書名:IPOの経済分析 過小値付けの謎を解く
著者:金子 隆
出版社:東洋経済新報社
発行年:2019年
価格:3,740円(紙)、3,553円(電子書籍)

 

 

著者は慶應大学商学部の名誉教授でファイナンス理論のスペシャリスト。

そのような方が書いた本だけあって極めて理論的で数式も多く、マクロ経済の素養がない私が読むのには一苦労も二苦労も必要でした。

正直言ってしっかり理解しているとは言い難いのですが、それでも大筋は掴めたと思うので以下、意訳的に内容を要約したいと思います。

 

証券市場では需給実勢を反映した値段が付けられるのが基本であるが、日本のIPOは需給実勢を無視して意図的に低い公開価格が設定されており、公開初日に売り抜けることでかなりの確率で高いリターンが得られてしまう。これは市場の原理に反しており、諸外国におけるIPOと較べても異常である。

アメリカのIPOだと2倍とかでも騒ぎになるので確かにそうですね

 

主幹事証券会社は意図的に低い仮条件および公募価格をつけることで投資家からの需要超過状態にさせる。これにより、多くの売買注文や預かり資産を獲得できる。これは発行企業にとっては明らかに損失であるが、IPOのメインとなる小規模企業は大手証券会社に比べ一般に交渉力が弱いため主幹事証券会社の提案を受けざるを得ない。

 

そのため幹事証券、多数の投資家は得をする一方で、発行企業だけが一人負けする状況が常態化している。これは法的には問題なく、証券会社や一般投資家にとっては極めて合理的な行動であるが、資本市場の健全な発達を阻害するものであり国民経済的には正当化できるものではない。

IPO投資家としてはこの状況が続いてほしいと思うのが率直なところです

 

・具体的には以下の弊害が考えられる
①公開初日に売り抜けを狙う投資家ばかりが増え、結果として初値天井をつける銘柄が増えることにより長期保有目的の投資家が魅力を感じなくなってしまう。

②公開価格が不当に低いため、売出しに応じる既存株主が損失を被ることになる。加えて、募集による資金調達額が減少することで投資計画を見直しせざるを得なくなる可能性がある。

③売り出し価格が低くなるためベンチャーキャピタルやエンジェル投資家など、将来性のある企業を発掘して出資する投資家の意欲を削いでしまう。

③が特にありそうです。自分がVCだったらロックアップを設けず初値で売りたくなります。
 
このように証券会社の発行会社に対する利益相反的な行為が常態化しているが、いまのところ明らかな社会問題にはなっていない。これはIPOに参加するプレイヤーの中では発行会社を除いた大多数が利益を享受しており、発行会社の不満の声は届き難いことが一因と思われる。また、発行企業にとっては損失といってもキャッシュの流出を伴うものではないため、初値が高く付くことで「市場から高く評価された」充実感が生まれることもあるかもしれない。
確かに初値が高騰すると発行会社もむしろ喜んでいるような雰囲気はありますね
 
先進国の中で日本だけ異常なIPO状況では「IPO後進国」といわれてもおかしくない。このような状況を是正するために以下の提言をしたい。

①仮条件や公募価格の値付けを需給実勢が反映される適切な価格にする。具体的には仮条件の範囲内で公開価格が決定される監修を廃止し、BB期間中の需要情勢をみて上限を超えた水準で公開価格を設定できるようにする。米国ではこのような制度である。しかしこれは誤った事前情報で不適切な仮条件を設定することにもなりかねない。また、需要家が正直に需要を申告したがらなくなってしまうリスクも有る。

②仮条件の適切な設定を促す。需給実勢を適切に見極め、初値が過度に高騰しない合理的な仮条件を設定するのが本来主幹事の役目ではないだろうか。例えば①が実行されている条件下で主幹事間で適切な価格設定を競わせるというのが一案である。

IPO投資家的には野○證券主幹事の案件は初値が高騰しにくいのでマイナスとされていますが、むしろ現在の状況の中で最も適切に仮条件を設定しているといえますね・・・
 
一般投資家が初値で売り抜けることで利益を享受するのは至って合理的な行動である。しかし不当に低くつけられた公開価格から本来なら得られないはずの利益をいつまでも享受できる現在の状況は問題である。公開価格が需給実勢に基づいた適切な価格に設定されるようになれば、証券業界が望む長期・安定的に保有する株主層の形成につながる。
 
以上、『IPOの経済分析 過小値付けの謎を解く』を紹介しました。
IPOが「無料で買える宝くじ」と呼ばれる現在の状況は明らかに異常であり、是正に向けた提言を行うという気概に満ちた本でIPO投資家としては耳の痛い部分もあります。
しかし現状の制度がどうなっていて、いかに価格が決められるかということを難しいながらも丁寧に解説しており非常に勉強になる本でした。
上記で紹介した内容はこの本の中の一部に過ぎないので、興味を持たれた方はぜひ実際に本を手にとってみてください。

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